【連載4】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所

2017/03/06

  • LAPP

可動用途に適したケーブル選びのポイント

これまで3回にわたり、産業用ケーブルの大分類をご説明してきました。産業用ケーブルには「動力・電源ケーブル」「制御ケーブル」「データケーブル」という3種類があることをご理解いただけたと思います。

 今回からは、さまざまなシーンに適したケーブルについて触れていきましょう。4回目のテーマは「可動用途に適したケーブル選びのポイント」です。第2回目の連載時に、ケーブルをご利用になる場合に「可動部か?」「固定配線か?」という点に留意する必要があることを示しました。

 ケーブルは、常に固定で配置されるだけでなく、パワーチェーンやロボットのように、連続的に動くような機械でも用いられます。パワーチェーンでは引きずられながらケーブルが曲がることがあります。一方、ロボットでは、さらに複雑な動きになります。首振りによってケーブルが屈曲したり、ねじられて回転するなど、複雑な動作が繰り返されます。

 そのため、ケーブルの変形や曲げ半径、ねじれ角度(張力)、移動速度、屈曲の繰り返し回数などを考慮し、繰り返し動作に耐えられる製品を選ぶ必要があるのです。このようなケーブルを選ぶときに効いてくる大きな要素が「ケーブルの素線構成」です。

 Lapp社のオイルフレックスでは、ケーブルの素線構成、すなわち柔軟性により「Class1」「Class2」「Class5」「Class6」の4タイプが用意されています。Classが上がるごとに柔軟性は高まり、可動部に適用しやすくなります。


 たとえば、電源ケーブルや機器の固定接続では、Class1のソリッドな1本線が使われます。ただし固定接続でも、場所によっては折り曲げて使いたいシーンもありでしょう。その際は、ソリッドな1本線だと折り曲げがしづらいため、荒い撚線のClass 2を選定します。これらは標準的なケーブルです。

 一方、可動部では細い撚線のClass 5が使われます。1時間に数回程度の曲げ可動がある部分に使われるため、ケーブル線の撚りピッチを長くして、動きやすくしています。それよりも頻繁に曲がったり、あるいは常時可動するような場所では、さらに微細な線を短いピッチで撚ったClass 6が適してます。

 用途別でみると、Class6でもケーブルベアのように直線的に動いたり、ロボットのように先端のエンドエフェクタが回転し、ケーブルが捩じられる場合があります。


 
前者のケーブルベア用では、曲げに強く、「Short lay length」(撚線ピッチが短い)の構造になっています。心線も内側と外側で捩じり方を逆にすることで、直線運動を何度も繰り返しても、ケーブル自体が捩じれにくくなるように工夫しています。またシールドは組み編み方式を採用しています。

 一方、後者のロボット用では、ロボットによってケーブルが捩じられるため、「Long lay length」(撚線ピッチが長く)で、捩じりに対して強くしています。ロボットの首振りは捩じりが正反転を繰り返すため、ケーブル自体のねじれは相殺されます。そこで、心線の内側と外側で捩じりを同一方向にしています。こちらの場合は、シールドが組み編み方式だと捩じりに耐えられないため、アルミでラッピングする方式を採用しています。

 

それぞれのClassに合うOLFLEXケーブルとは何か?

 可動ケーブルの種類が理解できたところで、具体的なケーブル選びに入りましょう。オイルフレックスには、Class5に対応する「Basic-Lineシリーズ」と、Class6に対応する「Core-Lineシリーズ」、ハイエンド対応の「Extended-Lineシリーズ」が用意されておりますので、ここから選んで下さい。

 下図の屈曲寿命のグラフを見ると、Basic-Lineシリーズ、Core-Lineシリーズ、Extended-Lineシリーズの順に屈曲寿命が長くなっています。常時可動する場合は、Extended-Lineシリーズが適していますが、当然ながら価格も高くなってきます。そこで、価格と耐久性のバランスを考慮にいれながら、中程度の機械的ストレスに対応できるCore-Lineシリーズをチョイスするという選択肢もあるでしょう。


なお、Basic-Lineシリーズの「OLFLEX CHAN 809」にも、いくつかの種類があります。単心/多心、シールド付き、ポリウレタン製などを組み合わせたものから選べます。Core-Lineシリーズでは、特殊なPVCシース(外被)で絶縁された「OLFLEX FD CLASSIC 810シリーズ」や、高耐油性、UL/CSA規格取得済など、多くのケーブルがあります。一方、Extended-Lineシリーズには、よりロバスト性に優れた「OLFLEX ROBUST FD」といった製品をご用意しています。

 可動部に使われるケーブルを選ぶ際は、このような基準で大まかに当たりをつけて下さい。さらに詳細の仕様については、弊社担当までご相談いただければ、最適な製品を提案させてただきます。次回は、OLFLEXの大きなウリである耐油性の話題について取り上げたいと思います。

 

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