【連載10】いかにして正しいケーブルを選定するか! 工業用ケーブル選びの勘所

2017/09/01

  • LAPP

ケーブルに求められるUL規格とはどのようなもの?

前回は、UL規格に関する一般的なトピックスを中心にお話しさせていただきました。今回は、いよいよケーブルに求められる主なUL規格の種類や、LAPP製品とUL規格との対応関係【★写真1】などについて、かなり詳しくご説明したいと思います。


【★写真1】LAPPの代表的なUL対応ケーブル。上から固定用の「TRAY II」、フレキシブル用の「SERVO FD 798CP」、稼働用の「CHAIN 896P」。

UL規格の多くは、米国やカナダで国家規格として認められているため、UL規格の証明を持つことは製品を輸出する際に、非常に重要なファクターになります。もちろん各種機械やシステムに利用されるケーブル類でも同様にUL規格が求められます。ではUL規格に対応するケーブルには、具体的にどんな種類があるのでしょうか? まずAWM、MTW、トレイケーブルを押さえておくとよいでしょう。

AWMは「Appliance Wiring Material」の略で、電源制御回路に使用されるケーブルです。適用規格はUL13ですが、これにはCL2(150V以下)とCL3(300V以下)があります。いずれもNFPA(米国防火委員会)、NFPA70(NEC規格:米国電気基準)、NFPA79(米国産業機械用標準)に対応したUL認証です。AWMは、難燃性の高いものから低いものまで様々なグレードがあり、洗濯機、冷蔵庫、コンピュータなどの家庭電気機器にも使用されます。

また米国内では、以前まで産業機械の配線として、リコグナイズド認証であるAWMケーブルの使用が認められていましたが、現在ではケーブルも含めた機器全体のリステッド認証を持たない場合は、ケーブル単体のリステッド認証が必要となります。なお、リコグナイズド認証とリステッド認証については、前回のコラムをご参照ください。

次に、MTWは「Machine To Wiring」の略で、適用規格はUL1063です。前出のNFPA70(NEC)とNFPA79に認定され、定格電圧600Vの機械配線用ケーブルです。PVC絶縁ケーブルと、PVC+ナイロン絶縁ケーブルがあります。難燃性で90℃までに対応し、主に機械内配線や、2つのコンポーネントから構成される接続などに使用されますが、ケーブルトレイ(ラック)内には使用できません(後述のTC認定ならば使用できます)。

3つ目のトレイケーブルは「Electrical Control Tray Cables」に属し、適用規格はUL1277です。もちろん名称の通り、ケーブルトレイで使用できるものです。ケーブルトレイには、トレイ上で利用できるTCと、トレイから出してもケーブルを一定距離で支持すれば使えるTC-ERがあります。

UL規格に対応したLAPP製品を詳しくまとめてみました!

ここからは、弊社が扱うLAPP製品のなかで、性能比較が可能なUL規格ケーブルについて一覧としてまとめてみました。

LAPP製品は、非常に多くのケーブルがUL規格に対応しています。そのため、ここでは主にPower & Control cableを中心に紹介しています。もちろん、BusやEthernet用でもUL規格に対応するケーブルが数多くあり、様々な用途に適したUL規格品をそろえています。

Power & Control cableは、主に固定/フレキシブル/可動用に分けられます。ここでは、これらの分類に従って、UL規格に対応したLAPP製品をご紹介しました。一口にUL規格対応ケーブルといっても、非常に幅広く、特徴や個性があります。ぜひケーブル選定の一助として、このデータをご活用ください。

 

用途 固定用途
シリーズ -
製品 150 191 CONTROL
TM
TRAY II
シールド対応 不可
ハロゲンフリー X X X X
外皮色 グレー グレー グレー ブラック
心数 2 - 50G 2 - 25G 2 - 25G 3G - 41G
サイズ (㎟) 0.5 - 2.5 0.75 - 120 1.0 - 16 1.0 - 16
UL NFPA 79
AWM
MTW X X
TRAY X X
TC-ER X X
CSA, cUL
CE CE, ROHS
HAR X X
可動性 FL-01 FL-01 WT-02 WT-02
機械的強度 MP-02 MP-02 MP-03 MP-03
耐油性 OR-04 OR-04 OR-03 OR-03
耐炎性 FR-02 FR-02 FR-03 FR-03
屋外 X X
埋設 X X X

LAPP OLFLEX Power & Control cable、固定用の代表的なUL製品と特徴。

用途 フレキシブル用途
シリーズ CLASSIC SERVO
製品 110 H 130 H 135 CH 9YSLCY-JB 719 CY
シールド対応 不可
ハロゲンフリー X X
外皮色 グレー グレー又は
ブラック
グレー又は
ブラック
透明 又は
ブラック
オレンジ
心数 2 - 41G 2 - 34G 2 -25 4G 4G
サイズ (㎟) 0.5 - 35 0.5 - 35 1.0 - 35 1.5 - 240 1.5 - 50
UL NFPA 79 X X
AWM
MTW X X X X X
TRAY X X X X X
TC-ER X X X X X
CSA, cUL X X X
CE CE, ROHS
HAR X X X X X
可動性 FL-01 FL-01 FL-01 FL-01 FL-02
機械的強度 MP-01 MP-01 MP-01 MP-02 MP-02
耐油性 OR-04 OR-01 OR-01 OR-01 OR-02
耐炎性 FR-04 FR-04 FR-04 FR-02 FR-02
屋外 ○(ブラック) ○(ブラック) ○(USA、カナダ除く) X
埋設 X X X ○(USA、カナダ除く) X

LAPP OLFLEX Power & Control cable、フレキシブル用の代表的なUL製品と特徴。

 

用途 可動用途
シリーズ SERVO FD
製品 FD
796 P
FD
798 CP
90 891 891 P 855 P
シールド対応 不可
ハロゲンフリー X X X
外皮色 ブラック又は
オレンジ
グリーン ブラック又は
オレンジ
ブラック ブラック グレー
心数 4G - 単心 3G - 34G 2 - 50G 2 - 41G
サイズ (㎟) 1.5 - 16 0.14 - 1.0 10 - 300 0.5 - 35 0.5 - 25 0.5 - 2.5
UL NFPA 79 X X X
AWM
MTW X X X X X X
TRAY X X X X X X
TC-ER X X X X X X
CSA, cUL
CE CE, ROHS X
HAR X X X X X X
可動性 CF-04A CF-04A CF-02 CF-01 CF-01 CF-04
機械的強度 MP-05 MP-05 MP-01 MP-02 MP-05 MP-05
耐油性 OR-05 OR-05 OR-01 OR-04 OR-05 OR-05
耐炎性 FR-02 FR-02 FR-02 FR-02 FR-02 FR-02
屋外 X
埋設 X X X X X X

用途 可動用途
シリーズ CHAIN ROBOT TORSION
製品 809 SC 809 896 P F1 FRNC
シールド対応 不可
ハロゲンフリー X X X
外皮色 ブラック グレー ブラック ブラック ブラック
心数 単心 2 -25 4G - 5G 2 - 41G 3G - 50G
サイズ (㎟) 6 - 300 0.5 - 4 1.5 - 25 0.25 - 6 0.5 - 10
UL NFPA 79 X X
AWM
MTW X X X X X
TRAY X X X X X
TC-ER X X X X X
CSA, cUL
CE CE, ROHS
HAR X X X X X
可動性 CF-01 CF-01 CF-04A TCF-01 TCF-01
機械的強度 MP-01 MP-01 MP-05 MP-05 MP-05
耐油性 OR-01 OR-01 OR-05 OR-05 OR-05
耐炎性 FR-02 FR-02 FR-02 FR-02 FR-02
屋外 X
埋設 X X X X X

LAPP OLFLEX Power & Control cable、可動用の代表的なUL製品と特徴。

 

可動性 機械的強度
レベル 内容 レベル 内容
FL-00 硬い MP-00 特別な機械的強度無し
FL-01 フレキシブル MP-01 平均
FL-02 ハイフレキシブル MP-02 良い-破壊と衝撃の実験室
CF-01 継続的な曲げ使用(中度) MP-03 とても良い-ERクラス
CF-02 継続的な曲げ使用(高度) MP-04 非常に良い
CF-03 継続的な曲げ使用(高度) MP-05 最良
T-01 捻れ
TCF-01 捻れおよび継続的な曲げ

可動用、および機械的強度の分類。レベルごとの詳細内容を示す。


耐油性
レベル 内容 (USA基準)
OR-00 耐油性無し
OR-01 UL62 1週間テスト 60℃にて油に7日間浸込む
引張強度 浸込み前の75%, 伸び 浸込み前の75%
OR-02 UL Oil Res.Ⅰ 100℃にて油に4日間浸込む
引張強度 浸込み前の50%, 伸び 浸込み前の50%
OR-03 UL Oil Res.Ⅱ 75℃にて油に60日間浸込む
引張強度 浸込み前の65%, 伸び 浸込み前の65%
OR-04 UL AWM 21098 80℃にて油に60日間浸込む
引張強度 浸込み前の65%, 伸び 浸込み前の65%
OR-05 100℃にて油に3週間浸込む
引張強度 浸込み前の100%, 伸び 浸込み前の110%
OR-06 180℃にて油に7日間浸込む,
引張強度 浸込み前の80%, 伸び 浸込み前の60%

 耐油性の分類。レベルごとの詳細内容(USA基準)を示す。



耐炎性
レベル 内容 (USA基準)
FR-00 難燃性わずか。容易に発火、燃焼し、自己消火性ではない。
FR-01 UL62,30秒の水平燃焼試験。発火、延焼しないこと。
FR-02 UL VW-1 5回の15秒の垂直燃焼試験。発火、延焼しないこと。
FR-03 UL垂直トレイ試験。20分間炎にさらしダメージが8フィートを超えないこと。
FR-03.1 UL垂直トレイ延焼試験。20分間炎にさらしダメージが8フィートを超えないこと、煙が95㎥を超えないこと。
FR-04 ライザーケーブルU L 燃焼試験。延焼は12フィートを超えてはならない。任意の場所で温度が850°Fを超えてはならない。
FR-05 プレナムケーブルU L 燃焼試験。2 0分間炎にさらし、ダメージが5フィートを超えないこと、ピーク時煤煙光学密度が、50を超えないこと

 耐炎性の分類。レベルごとの詳細内容(USA基準)を示す。

 

 

次回以降もRoHSなど、その他の重要なケーブル規格についてご紹介していく予定です。

 

 

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