2019 .1.28

「2018 Moxa Industrial IoT Solution Day」開催レポート(その2)

相互接続された工場内でマス・カスタマイゼーションを実現

こんにちは。前回に引き続き、「2018 Moxa Industrial IoT Solution Day」のレポート第二弾をお届けします。

前回:「2018 Moxa Industrial IoT Solution Day」開催レポート(その1)

今回のセッション2では、Moxa Inc.の蕭琳靜氏(Carrie Hsiao氏)【★写真1】が、「IIoT接続における課題」をテーマに、IIoT化の進展に伴って構成が複雑になった製造現場のネットワークに関する課題と、その解決方法について事例を交えて紹介しました。

【★写真1】Moxa Inc.Regional Sales Manager 蕭琳靜氏(Carrie Hsiao)

中国の某大手電機メーカーは、冷蔵庫を大量生産していました。同社は、従来まで納期やコストの観点から、サプライ中心のサービスを行っていました。しかし、Moxaの産業用ネットワーク機器を導入することで、相互接続された工場を構築し、その生産をユーザー中心のサービスへ移行することに成功しました。つまり顧客一人ひとりのニーズに合わせた「マス・カスタマイゼーション」を実現できるようになったのです。

蕭氏は「新たな顧客は、スマートフォンやタブレットから、オリジナル冷蔵庫をデザインできます。また発注、製造、出荷、配送のプロセスを、手元の端末で確認できるようになりました。製品が届くまで漫然と待つのではなく、顧客が生産の進捗をチェックできる立場になりました。メーカーと顧客の距離を縮めたのです」と説明しました【★写真2】。

【★写真2】顧客は、スマホやタブレットから、オリジナル冷蔵庫をデザインでき、
発注から配送までの生産の進捗を手元で確認できる。

一方、相互接続された工場では、モジュール化とスマート化の技術などを導入することで、大幅な生産性向上に貢献し、40%もの人員を削減することができました。仮想プラットフォームで、各工場の計画と設計を行い、各生産ラインの資材やモジュール、設備のスケジューリングを組んで製造を進められます。混合ラインでの組立状況に応じて、ロジスティックで完成品をAGVで搬送し、出荷するという流れです【★写真3】。

【★写真3】相互接続された工場のプロセスと顧客の関係。
工場では「計画と設計」「製造と検出」「ロジスティック」という流れで工程が進む。

「このシステムは、機器、センサ、ロジスティック、ネットワーク、情報という5レイヤーで構成されます。工場には1万個以上のセンサが取り付けられ、膨大なデータを産業用ネットワーク経由で情報レイヤーに送信します。生産ラインに異常が発生しても、即座に対応できる高信頼のIIoTネットワークが求められるのです」(蕭氏)【★写真4】。

【★写真4】相互接続された工場のシステム要件。機器、センサ、ロジスティック、ネットワーク、情報という
5つのレイヤーで構成され、高信頼なネットワーク接続により、パーソナライズされたカスタム製品を製造。

コストやスペックだけでなく、耐環境性や堅牢性が重要なIIoT機器

このIIoTネットワークを構築するためには、「システム間における大量データのリアルタイム伝送」と、「LANからWANに送信されるデータのセキュリティ侵害の懸念」という2つの課題を解決する必要がありました。

前者の課題では、低温や高温の過酷な環境にさらされ、ノイズを受けても耐えられる堅牢なネットワークデバイスが求められます。また回線が途切れてしまうと莫大な損失を被るため、ネットワークの冗長化も大切です。そして将来的なニーズに対応できる高い拡張性もポイントになります。

「やはり現場の不具合は、環境に適さないネットワーク機器を選んだことが原因になるケースが多いのです。中国の家電メーカーも、以前まで商用ネットワーク機器を使用して、ノイズ干渉や通信切断が問題になり、必要な生産工程を判断できないことがありました。この問題を解決するには、産業用の機器を選択する必要がありました」(蕭氏)。

実際に商用と産業用のネットワーク機器の違いには大きな差があります【★写真5】。たとえば動作温度を比べると、商用は0~50℃ですが、産業用では-40~+75℃と幅広いレンジが保証されています。冷倉庫で走るAGV(自動搬送車)では-40℃に対応できなければなりません。ノイズ対策も産業用のEMI/EMC対策はレベル2~4と高くなっています。

【★写真5】商用と産業用のネットワーク機器の違い。動作温度がワイドで、対ノイズ性に優れ、
産業用の専用バスに対応し、冗長構成でネットワークを高速に復旧できる。

ネットワークも産業用で利用されるフィールドバスなどが一般的です。また冗長性という面では、MOXA製品はネットワークが落ちても、50msという速さで元の状態に復帰できます。システム間の冗長化技術として、以前ご説明した「Turbo Ring」をサポートしています。

「もしも半導体製造工場で冗長化されていないネットワークが落ちると、システム回復までに、分単位で数百万円が損失される恐れがあります。そこで何かあった場合でも、ミリ秒で回復できる産業用レベルの冗長ネットワークが必要になるのです」(蕭氏)。

制御システムのセキュリティリスクに備えることもポイント

次に、後者の課題となるセキュリティ面を見ていきましょう。近年、情報システムと同様に、制御用システムも不正アクセスやサイバーアタック、ウイルス感染などのリスクが増大しています。

「大規模な発電所がサイバー攻撃で停電したり、半導体受託製造ファウンダリ最大手のTSMC社がウイルス(WanaCry)に感染し、140億円の損失を受けました。工場がインターネットに接続していないから大丈夫というわけではありません。IIoTの進化に伴って、工場がつながり、各種データを収集するためにOTシステムに接続するユーザーが増えています。そのため不正アクセスや情報漏えいのリスクも高まっているのです」(蕭氏)。

制御機器のセキュリティには、業種や業界に対応した基準が用意されています。各基準は、メーカー、運用面、設計面などにより、カバーされる範囲も異なります。たとえば北米の「NIST 800-53」は運用面を重視しています。一方、変電所基準の「IEC 62351」は設計面にウエイトを置いています。また産業オートメーション向けの基準である「IEC 62443」は、カバーリングが広く、各業種のシステムや設備で最も適する基準です(オレンジ色の部分)【★写真6】。

【★写真6】制御機器のセキュリティ基準。各基準によってカバー範囲が異なる。
産業用の制御システムでは、カバーリングが広い「IEC 62443」が適する。

「IEC 62443は、デバイスからネットワーク、運用管理面まで定義されており、産業用の制御システムにおいてベストプラクティスを提供しています。MOXAのデバイスは、この基準に則った高度なセキュリティ機能に対応しています。ネットワークについては多層防御によって強固なセキュリティを実現しました。セキュリティ管理面でも、MOXAは視認性の高い“MX View”というソフトウェアを用意しています」(蕭氏)【★写真7】【★写真8】

【★写真7】MOXA製品は、ネットワークについて多層防御によって強固なセキュリティを実現。
強固な産業用ファイアウォールや、安全なVPN接続などを提供。

【★写真8】MOXAはセキュリティの管理面も重視。色分けされ、
視認性の高い「MX View」というソフトウェアを用意している。

サイバーセキュリティにかかわる課題は、運用管理面から、製造現場の設備まで、非常に幅広いのです。そこでMOXAでは、より高度なセキュリティを実現するために、トレンドマイクロとアライアンスも組んでいます。今後、MOXAはIIoT関係のセキュリティソリューションに注力していきます。

最後に蕭氏は「IIoTの接続に最も重要な点は拡張性とネットワークのセキュリティです。IIoTは産業・社会・企業のビジネスモデルを大きく変革しています。中国の家電メーカーだけでけでなく、ナイキやBMWといった企業も、多品種・少量生産、かつ低コストな生産技術に取り組んでいます。皆さんもIIoTのコネクションについて、あらためて考えてみてはいかがでしょうか」と、セッションをまとめました。